サン&リブのつくりかた 奥田政行× 中山ダイスケ× 稲村和之

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『山形代表』のパッケージはどのようなイメージで作りましたか?

中山

桃ジュースとして考えず、桃をつくるように考えました。「これを桃にしちゃえ」というところがスタート。そして、缶の冷たい質感には限界があったので、プリントするという手法でできないか? と考えていくうちに、「桃であること」よりも「山形であること」をお知らせする必要を感じて、名前が大事だと思いました。最初は、なんだったかな…山形物語とか果物山形とか。そのサブタイトルで「山形代表の果物たち」というのがあって。『山形代表』でいける、と思ったのは、高校野球を見ていた時です。

一同

おお!

中山

僕、高校野球好きなんですけど。2009年は酒田南が代表で、2010年は山形中央が出場。高校が変われど「山形代表」として紹介されるのを見て、「桃だって毎年違う。来年の桃は、もしかしたらもっとすっぱいかもしれないけど、代表になっていく」と思い、桃にしないで桃の入れ物にしちゃえと。毎年違う桃の「山形代表」が楽しめたら良いなと。できれば年号も入れたいくらいで。こんな無茶なアイデアで通るのかな、と思って稲村社長のところに持っていきました。山形食品の人を驚かすために、プレゼン用に箱を作って、ずらりと並べて。

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この提案を受けた時、どうでしたか?

稲村

基本的に業界で黒いのはタブー。しかし、これを見た時に、パッケージの果物が浮き出るように映えていてびっくりしました。「ちょっと私たちだけで見るのがもったいない」とみんなを呼んで。

中山

そうそう(笑)社員さん勢揃いで。

稲村

そしてみんなで「これはいい、これでいくべいくべ!」と、もうふたつ返事で。山形の人は変化を好まないけど、「何と言われようとこれでいくぞ!」と。このデザインに強い衝撃を覚えました。

奥田

「やられた、こうきたか」と。通常より高い価格設定で、とにかく味にこだわって妥協せずに作ろうというところに、このパッケージできたので「さすが!」と思いました。

中山

小さいですからね。ごくごく飲むというよりは、本当に味わって、最後にもう一口欲しいと感じるものです。

奥田

もっと短い缶があっても良いかもしれませんね。

中山

逆にすごい長いのとか。「今年、トマトが採れ過ぎたんで」とか。

一同

ははは(笑)

中山

グラフになったりしてもおもしろい。現実的には難しいですけどね。

奥田

生産者数を表したりね。ラ・フランスが「目指せさくらんぼ!」で頑張る姿が見えたりとか。世界でも日本の果物はレベルが高いです。いろんなレストランの厨房に入りましたが、トマト箱に入ったものの中から良いものを探そうと思うと、日本で普通に売られているものと同レベルのものは、1個あるかないかです。

中山

特にレベルが高いのは、山形、福島ですよね。いろいろな種類がきちっとある。

奥田

山形は、オールフルセット、フルバランスなんですよ。食べ物の種類や自然のバランスがとても良いんです。

中山

フルーツ王国と言って良いのは、このあたりだけ。「福島代表」があってもいいですけどね。

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いいんですか? 敵対しませんか?

稲村

いいじゃないですか! 農家のためになるんだったら。生産者の方が、どんどん刺激を受けてやるなら、秋田代表、宮城代表でも良いし。

奥田

口にした人が産地に近づいていきますからね。

稲村

そう。産地の顔が見えるというか、消費者が産地と結びついていくというのは、我々の目指すところです。

中山

レベルは高くあってほしいですけどね。余りものを潰して「代表」じゃ意味がないので。


中山ダイスケ
なかやま・だいすけ。現代美術家、デザイナー、舞台美術家、アートディレクター。東北芸術工科大学グラフィックデザイン学科教授。1968年香川県生まれ。武蔵野美術大学でグラフィックデザインを学ぶ。現代美術家として独立後、NYで活動。斬新な表現力と独特の造形感覚による作品が高く評価されている。2002年から東京で活動。デザインの分野でも活躍している。

インテリアデザイナー森田恭通氏と手がけた東京ミッドタウンのレストラン「OKAWARI.JP」。レシピでうめられた巨大な黒板による空間構成。

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『山形代表』のCM[注4]は、サッカーの日本代表の記者会見がモチーフになっていますね。

中山

まず、「代表」という名前を知ってもらうためにスポーツを利用しようと。フランスW杯[注5]の時に、三浦カズ選手が外れたことで「カズをはずしてまで城選手でいくのか!?」[注6]と、選ばれた人がかえって際立ちました。山形は、どの果物も生産量5本の指に入るのに、山形といえば「さくらんぼ」。だから、そのスーパースターを、他に目を向けてもらえる論法で作りました。なんとか15秒であの感じを出したくて一生懸命人形劇をやったわけです。

奥田

お正月に、そろそろ仕事初めかなという時にテレビで見ました。新しい感じがしましたね。

中山

あまりに難解で、ちょっと何のCMかわからないっていう…。まあ、CMがヒットして売れるタイプの商品ではないから、キャッチーにする必要もないかなと。

稲村

さくらんぼのサクが代表入りしないことが、「さくらんぼもっと頑張れ」とエールを送っているようで奥深いですね。まあ、さくらんぼだけは旬に実を食べてもらうのが一番おいしいですから。

中山

さくらんぼが代表落ちした悔しさを話しながら、みんなにエールを送っているという続きが、ウェブで見られますよ。カズ選手が代表落ちしてフランスから帰ってきたときのセリフを、そのままさくらんぼが喋っています。

注4
『山形代表』のCM
2010年8月から県内で放送されているテレビCM。山形食品のウェブサイトでは、本編の他に中山教授が手がけた8つのスピンオフムービーを見ることができる。
> TVCM を見る

注5
フランスW杯
1998年6月10日から7月12日にかけてフランスで開催された、第16回FIFAワールドカップ。日本はこの大会でW杯初出場を果たしたが、予選でアルゼンチン、クロアチア、ジャマイカに負け、3敗で終わっている。

注6
「カズをはずしてまで城選手で
いくのか!?」
「カズ」「キングカズ」の愛称でおなじみのサッカー選手、三浦知良。日本サッカーを引っぱるエースFWとして活躍していたが、フランスW杯では、日本代表として予選で総得点を27点記録するも本大会の代表入りはならなかった。本大会直前のスイス合宿から帰国し、会見で述べた「日本代表としての誇り、魂みたいなものは向こうに置いてきた」というコメントは、マスコミで大きく報道された。「城」は、当時横浜マリノスに在籍していたFW城彰二選手。