サン&リブのつくりかた2 飯森範親×奥野僚右×中井川茂敏x中山ダイスケx稲村和之

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先ほど中山先生が「他の文化と絡めたい」とおっしゃいましたが、飯森さんとサン&リブとの出会いは、その可能性を大きく広げたようですね。

中山

山形には、いい果物をつくっている生産者がいて、いい音楽を奏でる楽団があるけど「それはそれ」になっています。サン&リブが企画しているコンサート[注4]で、生産者と消費者、そして音楽をつなげたいなぁと思っています。

稲村

いいこと言うね〜。

中山

自分が作ったものがジュースになって、地元の指揮者が美味しいといって広めてくれているだけで、自分がやっていることと音楽が結びつくんですよ。で、音楽をいいなぁと感じるきっかけになる。

飯森

これのCMに僕出させてください。

稲村

つくる?

中山

いいですよ。こんな風に会う度に何かが決まっていくんですよ。もう大変で…。(苦笑)

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中山先生は、山形交響楽団(以下、山響)の定期演奏会のポスター、チラシ[注5]を制作されていますが、どんなイメージを持って制作しましたか?

中山

飯森さんからは、「世界から観客も来るので、持って帰ってもらえるようなもの、世界中のホールに貼りたくなるものを」と言われました。クラシックのポスターは大概、黒いバックに指揮者がタクトを振っているようなものですが、僕のデザインはそういった型から外しています。山響はコンサート一つひとつに色がついているようなイメージ。毎回いただくテーマがよく考えられていて、それを色に表したいと思っています。まだ、やりながらですけど。山形の人から見ると、なんだあれは? という反応ですが、デザイン業界的には評価は高いです。

飯森

かなり斬新ですよね。現代アートは、一般ピープルがついていくまでに時間がかかりますが、本当にすばらしいものであれば追いつくはず。例えば、初演から100年を迎えるストラヴィンスキーのバレエ音楽『春の祭典』[注6]は、公開当初大ブーイングを浴びました。でも今は古典です。中山さんのデザインは、ご自分でもおっしゃっているように改善の余地はあるのでしょうけど、5年から10年経てば、山響のシンボルになっていくのではないでしょうか。

中山

やはり、山形の人が「好き」と言うものがいいものだと思います。まだやり始めたばかりなので、シーズンごとに変えていこうと思っています。


中山ダイスケ
なかやま・だいすけ。現代美術家、デザイナー、舞台美術家、アートディレクター。東北芸術工科大学デザイン工学部グラフィック学科教授。1968年香川県生まれ。武蔵野美術大学中退後、演出家・飴屋法水に師事したのち、現代美術作家として独立。斬新な表現力と、独特の造形感覚による作品が国内外で高く評価されている。2002年から東京で活動。

注4
サン&リブが企画しているコンサート
三者協定の一環として、山響の演奏会「SUN&LIVコンサート」を現在企画中。2012年12月に開催を予定している。

注5
2012年から山形食品が山響の定期講演会のポスター、チラシ類を協賛し、制作を中山教授が手がけている。クラシックコンサートのポスターには珍しい色づかいや文字組が特徴的。山響の新たな一面を感じさせる。

注6
春の祭典
ストラヴィンスキーが作曲したバレエ音楽。20世紀の近代音楽の傑作に挙げられる作品だが、複雑なリズムや不協和音が多く、ニジンスキーの振付も革新的なものであったため、1913年の初演では大騒動になったという。

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山響との関わりで感じたことを教えてください。

中山

すごく誠実にやっている、客観性をもった楽団だなと。山形にフルオケがなぜ必要なのか、なぜ支持されているか、なぜうまくいっているのか、存在意義を常に考えていらっしゃるんです。稲村社長も「自分はジュース屋だ」と、確認しながら言うことがあって。山形にあるジュース屋さんなので、良いジュースを作らなければならない、とおっしゃるんですね。僕も東北芸工大で教えていて「なぜ山形にこんな最先端のデザインとアートをやっている大学があるのか」、それを客観的に見ている感じが大事だと思っているので、山響はすごく好きです。そこにあるのが当たり前になると、代わり映えしなくなってしまうので。

飯森

それは、僕が最初から言ってきたことです。現在、大阪の橋下市政[注7]では楽団や文楽の存在意義を問われていますが、自分たちは音楽家だから支援してくれて当然、という意識は捨てなければならないと思っています。山響はずっと、事務局とオーケストラとそういう意識でやってきています。

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サン&リブが山響のドリンクサプライヤーになったのはなぜですか?

稲村

全て飯森さんと会ったことからスタート。山響は山形の宝と誇りに思うのと同時に、もっとパワーアップしてほしいとも思っていました。そこに飯森さんが来て内側から改革をしているのを知って、お手伝いしたいと。サン&リブの提供だけでなく事業としても応援したいと思い、サン&リブコンサートを開催しようということになりました。八神純子さん[注8]とのジョイントコンサートにして、消費者と生産者の交流の場にしようというアイデアがでて、それでやりましょうという話になっちゃったんです。

飯森

その場で僕が八神さんに電話したんですよね。こういうのどうですか? とお話したら「やるやる〜」と言われて。

稲村

たぶん会社内でそんな話になったとしても、話だけで終わったかもしれません。だけどこの二人の前にいると…開いてはいけない扉を開いてしまうんだよなぁ。

一同

(笑)

稲村

開いたら閉まらない扉だった!

飯森

いや、開けた後、閉じて戻れない扉なんですよ。

中山

ひとつ開けたら、もうひとつ先に扉があるんですよ。もう開けるしかない。

一同

開けるしかない(笑)

飯森

どんどん開けるよ。まだまだ!

稲村

いやぁ、たのしみですねぇ。

注7
橋下市政
大阪市の橋下徹市長は、公益財団法人「文楽協会」、大阪フィルハーモニー交響楽団への助成金をカットする意向を表明し、物議をかもした。

注8
八神純子
シンガーソングライター。1978年9月にリリースした『みずいろの雨』が大ヒットを記録。2012年には11年ぶりとなる全国ツアー『翼−私の心がきこえますか。−』を行っている。

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サン&リブが山響に関わることについて、団員の反応はいかがですか?

飯森

こういう風にしてくださる企業が増えてきたということが、モチベーションにつながり高評価を得るエネルギーになっている気がします。

中山

誇りになっているのかもしれませんね。地元でどんどん違う顔の人が演奏を聴きに来てくれる、地元の企業がサポートしてくれているということで、さらにプロ意識が高くなるんじゃないでしょうか。山響の公演は、東京や大阪で行う時に山形のいいもの(物産展)がくっついているので、全体で"山形代表"という文化のかたまりになっていると思うんですよ。だから、協賛する企業が増えて、文化をミックスしていくといいですね。モンテディオにはサポート企業がついているじゃないですか。交響楽団にもそれがついてもいい。

稲村

そう!

飯森

そうなんです!

稲村

それで、山形交響楽協会と山形県スポーツ振興21世紀協会と山形食品で、三者協定[注9]を結び調印式をやったんです。私たちは力を合わせる、というメッセージを発することで、いろんな方が仲間に入りやすい環境になるのではないかと。

中山

どこの宣伝でもなく、農家の夢、モンテディオの夢、音楽の夢を乗せているのが結構画期的ですよね。

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それぞれの分野で、受け手の感性に訴えかけるものを創り出すために必要なことは何だと思いますか?

中山

まだ、やっている途中なのでわかりません。『山形代表』のデザインワークに関して言うと、正直に謙虚につくるということ。果物の一個一個が美味しいということを、そのまま作るということ。普通は中身より優しく演出したりすることもありますけど、そのまんま、楽しく飲んで欲しいから楽しく作りました。真っ直ぐ美味いので真っ直ぐつくっただけです。

飯森

音楽も一緒。子どもたちが音楽を聴いた時、一番子どもたちの胸に響くのは、大人が一所懸命演奏している姿なんです。我々大人が中途半端ではダメ。必死になって一つの音を追求し、自分の全てをつぎ込む"一所懸命"さが、聴いている人たちの感性に訴えかけることができるのではないかと思っています。

中山

いいですね。ストレート音楽100%。

飯森

ストレートアプローチ、ストレート果汁、ストレートミュージック100%。うん、いいな。

注9
三者協定
音楽・スポーツ文化の振興と県産果実の評価向上を目指し、山形交響楽協会、山形県スポーツ振興21世紀協会、山形食品の三者で結んだ協定。山形食品が呼びかけ実現した。2012年3月31日には文翔館(山形市)で協定書締結式を行い、注目を集めた。